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「……何を言われたの?」
探るようなアルフォンスさんの眼差しに、首を振って否定する。
「何も…私は、何も知らされていないとだけ」
「………」
何かを考えるように、アルフォンスさんが無言になり、暫くしてから、意を決したような表情で私を見た。
「………アトロディアの寵愛は、欲しくて手に入れたんじゃない。無理やりに押し付けられたんだよ。もう、随分と昔の事だ」
初めて聞かされる、アルフォンスさんの真実に、その一つ一つを逃すまいと耳を傾ける。
「不老不死になった僕は、名前を変えながら転々と世界を旅した。同じ名前だと、何かあった時に誤魔化せなくなるかもしれないからね。そんな人生の中で、君の母親であるアデルと、父親のクリストフと出会った」
昔を懐かしむような表情でお母さんの名前を口にするアルフォンスさんを見て、チクリと胸が痛む。
だって、お母さんは、アルフォンスさんの想い人だから…。
「………底抜けに優しく、世話好きなクリストフと、気が強く、勝気なアデル。二人とは、不思議と気が合って、直ぐに友人になった。それでも、自分の事を多くは語れない僕に、二人……特に、アデルは不満に思っていたと思う」
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