動き始める歯車

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「め……迷惑じゃ…ないです」 答えながら、恥ずかしさで顔が見れなくて俯く。 「けど、今回の事で、よく分かったよね?僕と一緒にいる事が、どういう事になるのか」 言われて顔を上げた私に、真剣な顔をしたアルフォンスさんが、包みを差し出した。 それは見覚えのある包みで、以前、レオンさんに騙されるようにして飲まされた、女神の涙だった。 「……アルフォンスさん?」 意図が分からなくて、アルフォンスさんと包みを交互に見つめる。 「今なら、まだ何とか引き返せる。違った生き方が出来る」 まさか……これを飲めと? これを飲んで、全て無かった事にしろって? 今までの事、全部? 「っ!」 思わずカッとなって、アルフォンスさんの手から、引っ手繰るようにして包みを奪い取ると、驚くアルフォンスさんの前で、包みから取り出した一粒を口の中へと放り込んだ。 「なっ…!」 「ミシェル!」 アルフォンスさんを真っ直ぐに見つめたまま、真名を呼ぶ。 「ふざけないで下さい!そんな事くらいで、逃げ出すような、そんないい加減な気持ちじゃありません!私の想いを、見くびらないで下さい!!」
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