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*動き始める歯車・10*
拗ねたオイちゃんを何とか宥めて、私達は、建物を出た。
そこは、街はずれの建物だったようで、遠くに見覚えのある建物が幾つか見える。
そして、建物を出たところで、アトロディアが待ち構えていた。
それを何となく予感していた私達は、驚く事もなく、正面から対峙する。
「久し振りだな。何年ぶりだ?」
「こっちは、会いたくなかったけどね」
アルフォンスさんの嫌味も、アトロディアは余裕で流す。
「サクラに、何の用?返答次第で、こっちにも出方があるからさ」
「決まってるだろ?可愛いお前の為に、良いことを思いついたんだ」
ワクワクした気持ちを隠しもしないで話すアトロディアに、アルフォンスさんは嫌悪感丸出しの顔で眉を顰める。
「良いこと?」
その声のニュアンスは、決して信用していない。
「そうだ。お前も、そろそろ番が欲しいだろ?寛大な俺は、その女にもアトロディアの寵愛を与えてやろうと考えた訳だ。どうだ?面白いだろう?」
瞬時に、アルフォンスさんが動いて、私の盾になるようにして前に出た。
「言ってる意味が分からないんだけど。何処が良い考えな訳?頭おかしいんじゃないの、変態」
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