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私、鷺原真鈴(さぎはらますず)は朝が苦手だ。
太陽は眩しいし、気分は乗らないし、動きたくない。
それでもアラームは今日とて鳴る。
止めないから鳴り響く。
誰か代わりに止めて欲しい。
「んー…」
布団から出ずに手を伸ばし、手探りで携帯を探すものの見当たらない。
渋々布団から出た私はあくびを1回、
首を回して未だに開いていない目を両手で擦る。
ベッドの下に落ちている携帯を拾いアラームを止め、
カーテンを開けて朝日を浴び、
「はあ…」
と溜め息を吐く。
そしてベッドに腰掛け携帯を見て私は目を疑う。
「目を疑う」と言うよりは、寝る前の自分を疑う他なかった。
「アラームかけるの1時間ずれてるじゃん」
寝ぼけていた、何故一時間もずれた時間にアラームをセットしてしまったのか。
ただ問題は自分の失態を責めている場合ではなかった。
一番の問題は「遅刻する」ということだ。
────ああ、お母様、美鈴は今日も寝坊してしまいました。
などと心から母に謝る私。
地元から離れ、高校に通う私は一人暮らしなわけで、
勿論の如く誰も起こしてくれたりはしない。
「ちゃんと朝一人で起きて学校に行く」
などと無謀な約束をして、私の一人暮らしを許してくれた以上、
遅刻などした日には実家に帰ったときに何を言われるか分かったものじゃない。
実家に帰って早々説教されるなど、勘弁してほしい。
お腹は空いているものの、慌てて支度をする私には朝食など摂る時間もなく、
シャワーを浴びて着替えてすぐに家を出る他なかった。
「行ってきます!」
そう私は自分の部屋に別れを告げ、家を後にした。
学校に向かうまで徒歩で二十分程度。
走れば十分程度で着く距離なので、今日もギリギリHRに間に合うだろうと思っていた。
間に合うはずだった、家を出たその時は。
今日が変わらない日常であったなら。
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