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「なんとかなるそうですから、この道をまっすぐ行ってください」
「はあ」
「ワンちゃんも元気になりますよ。今度はあなたがリードを引いて、脇道にそれないでくださいね」「はい。ありがとうございました」
男は出口でもう一度軽く頭を下げると、犬と寄り添うようにして歩いていった。
男を見送ると、奥の部屋からマグカップをふたつ持って同僚が現れた。
「大丈夫なんですか」
「急に息を吹き返す奴がいて欠員が出来たそうだから、大丈夫だ」
「一緒に来ちゃったんですねえ」
「ああ、犬だけのはずだったんだけど、散歩の途中で息を引き取ったのに気づかないでついてきてしまったんだな」
「いつ気づくんですかね」
「さあな」
キーボードをはじき、リストに男の名前を書き加えて今日の日付の黒いフォルダにしまった。
了
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