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女は通りすぎる時に僕にこう言いやがった。
「分かってくれたのね。よかったわ。」
何か勘違いしてるであろう女。でも僕はそれを訂正することなく、スルーしてあげた。
必至なタクの声を背後に聞きながら、これからの展開を予想して思わず笑った。
ちょっと我慢したから、鼻でバカにするような笑いになったけれど、バカにしてることは事実だから、仕様がないよね。
必至なタクに女が近寄り、声を上げる。
「タクミさんっ!」と呼びかけるソレは女特有の甘えた声で、また吐き気。
きっとさっきのような気持ち悪い顔をしてるんだろうと思うと振り返る気にもなれない。
茶番劇は勝手にやってろ、って感じ?おっと口が悪くなっちゃう。気をつけないと。
ゆったりと歩く僕に必至で呼びとめるタク。そんなタクの視界に入ろうと声を上げる女。
んー、カオス?と人ごとのように思っていれば、イキナリ背後から抱きとめられた。
困ったな。これじゃ前に進めないや。
痛いくらいに絡みつく腕にはぁーと溜息を吐いて、腕をポンポンと叩く。
「痛いよ、タク。」
「トモ、頼む。俺を捨てないでくれ。」
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