12人が本棚に入れています
本棚に追加
「トモ、婚約者のこと黙ってて悪かった。」
「何か言い訳でもあるの?」
いつも周りに見せる余裕で大人なタクじゃない。必至で情けなく僕を窺うタクに僕はコテンと首を傾げて聞いてあげる。
話はちゃんと聞いてあげなきゃ。話もせずにすれ違いなんて、馬鹿バカしいと僕は思っているから。
「俺は毎回話が出る度に断ってるんだけど、親父が認めなくて…。」
「へぇ、そうだったんだ。」
珍しく言い訳澱むタクの言葉に、相槌を打つ声が若干冷たくなる。
だって僕はそんなことを聞いているんじゃないんだよ?
どうしてそれを僕に話してくれなかったのかが聞きたかったんだけどなぁ。
真正面からまっすぐと、ユラユラと不安げに揺れる綺麗なタクの瞳をまっすぐに捉え、ゆっくりと諭すように語りかける。
「僕が知らないタクのこと、他人から聞かされたことが、嫌だったんだよ。」
タクならわかるでしょう?と、苦笑いで伝えた。
くしゃっと泣きそうな顔になるタクの頬を両手でつかんで、きちんと伝える。
「それが、そんなくだらないことが、亀裂を作るなんて、僕は耐えられない。」
障害が多いからこそ、大切な2人の信頼を、自ら壊すようなマネはしないで…、と、ちょっと切実に思うほど、僕は君を愛してるんだよ。
.
最初のコメントを投稿しよう!