12人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は彼の婚約者ですっ!」
「へぇ?だから何ですか?」
冷静さをなんとか保ちながら対応する。実際はイライラきてるよ、流石の僕でもさ。
だって婚約者がいるなんて、初耳なんだから。
この女が勝手に名乗っている可能性もある。それはそれでイラっとくるけれど、もし仮に女の言うことが真実だとしたら…。
そんな可能性が消えないことに苛立った。なんたってタクは御曹司なんだから。
今まで婚約者の話題がでなかった方が不自然なんだ。意図的にタクが隠していた、ということなんだろうか。
平然と返した僕に女はしばし絶句していたが、はっとしたように姿勢を正した。
「だからタクミさんの恋人面は辞めてください。」
「そんなことしてません。正真正銘の恋人ですから。」
イライラが収まらないままに女との対面は続く。僕の言葉も次第にトゲトゲしいものになってしまう。仕方がないと思うけれど。
「じゃあ恋人というなら、別れてください。タクミさんと縁を切って下さい。」
僕が引かないと分かったのか、最初よりは下手に出た女はそれでも、敵意だけはビシバシと注いでくる。
僕だってこの女のせいで不愉快な思いをしてるんだ。ここまできて、はいそうですか。なんて言うわけない。
.
最初のコメントを投稿しよう!