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「ホント?俺も駅前なんだ。どこの喫茶店?」
「ちょうどいいね。今外に出るよ。一旦切るから。」
タクの返事に好都合とそう言い、勝手に通話を終了。女に目を向けて、簡潔に説明してあげた。
「タク、近くにいるみたい。とりあえず出るから。」
女の返事も聞かずに席を立つ。御代?それはこの女が払うに決まってるじゃない。僕は呼び出された側なんだから。
慌てて伝票を掴み、後を追おうとする女なんてマルっと無視して店を出る。
出てすぐにタクは見つかった。
そりゃあんなに長身でカッコいい男はそうそういないからね。目立つ場所でキョロキョロとしているその姿に思わず笑みが浮かんだ。
周囲の媚びた視線に見向きもしないで探しているのは、紛れもなく僕なんだ。
店の前でその姿を見つめていれば、視界に僕を入れたタクが急いで駆け寄ってくる。
僕もゆっくりと歩み寄って、その距離を縮めた。
「トモっ!」
焦ったように僕を呼ぶタクに不思議に思って首を傾げると、その場でギューっと抱きしめられた。
「あぁよかった。電話で様子変だったから、何かあったのかと思って…。」
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