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成る程、と納得しつつもそう言われるとイライラが復活してきて、僕はタクの背にいつものように回していた手を下げた。
それに今度はタクが不思議そうな顔をする。
だから僕はとびっきりの笑顔で言ってやったんだ。
「婚約者、いるんだって?」
「っ!そ、れは…!」
過剰反応のようにビクついたタクの体を離して、なんて言おうか悩んでいるタクに向かって僕は更に言い募る。
僕に隠し事なんて、いい度胸じゃないかタク。
僕たちのこれまでの信頼関係を、お前から壊そうとしているんだよ?それが僕には酷く腹立たしい。
婚約者なんて、婚約者なんて…。
「どうでもいいよ。」
「ど、ゆう、意味?」
「それに俺を巻き込まないでね?」
全部話してくれていたら、一緒に戦ってあげたのに。僕たちの愛を見せつけてやったのに。
タクが秘密にするのなら、タクが勝手に解決すればいい。僕には、関係ない。
「待って!待てトモっ!」
必死に僕を呼びとめようとするタクに背を向ければ、さっきまで対面していた女が。
タクを目の前に僕の前では決して見せなかった乙女の表情。うげぇ気持ち悪ぅ。
顔を歪めた僕になにを思ったのか、勝ち誇った顔でニンマリと笑う女。
マジ吐きそう。そんな女を視界から外し、女の横を通りすぎる。
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