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加用の父親は、まるで我が子の結婚を喜ぶように、誇らしげに語る。
それだけ久我の恋人は、この土地で重要な立場にある人間なのだろう。
「なんだかお祭りみたいですね」
「そうそう、街を上げてのお祭りですよ。わたしとしても、新郎の成長をずっと見てきましたからね。僭越なことですが、肩の荷が下りる思いもあるんです。なんたって、これからの巡崎神社を背負って立つお方のご婚儀ですから」
「え……?」
胸がざわりと波立つ。
――神社を背負って立つって、久我の恋人さんも神社関係者ってこと……?
久我は、以前、恋人とのことを『お互い特殊な家の人間』だと言っていた。
神社の宮司という稀に見る家系に生まれた久我。そして、恋人も、同じ巡崎神社に関係する人間ということになる。
久我は、生涯、宮司として、神社の中で生きていくだろう。
そうなると、自分とは違う人間と一緒になった恋人の姿を、ずっとそばで見続けることになる。
貢は、胸を乱暴にギュッと鷲掴みにされたように、息が苦しくなる。
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