05 巡崎 ― 1年前 ―

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「貢相手だと加減がなくなるんだ。そんな俺を貢がエロオヤジだと思うのなら、それも甘んじて受け入れよう。でも、ちゃんと恋人だということも認識してほしい」 「だーかーらー! なんでそこが引っかかってんだよ。俺は気もない男相手にこんなことしねぇって、いつも言ってんじゃん。いい加減同じこと言わせんなっ」 「こんなことって?」 「あーもう、わかったよ。そうだよ、セックスだよセックス! 昨日からずっとやってんだろ! しつこくしやがってっ。好きなら突っ込まれる俺の身を少しは案じろっ」 「……貢は情緒がない」 「アンタに言われたくないわっ」  手加減なしの求愛と、重ねた肌の心地よさを教えられてしまった今、自分にとって、松岡がどれだけかけがえのない存在になっているかは貢自身が一番わかっている。  ただ、初めての恋人で、ただでさえ素直に振る舞うことが苦手な貢は、あまりに直球的な松岡の求めに応じることができないのだ。 ? 「俺は名前で呼ばれたい」  松岡の〝恋人必須事項〟に、下の名前で呼び合うという項目があるらしい。そばに居るようになってずっと言われ続けているが、不器用な貢には何よりもこれが難しい。恥ずかしいのだ。 「……別に松岡は松岡だろ。呼び方なんてなんでもいいじゃん」 「それは違うぞ、貢。とても大切なことだ。ぐっと心の距離が近くなる。家族と苗字で呼び合ったりしないだろう?」 「まぁ、確かに兄貴のことは名前で呼んでるけど」 「なんて呼んでるんだ?」 「匠(たくみ)って。歳離れてっからガキの時は呼び捨てにすると怒られてたけど匠は匠だし。そういえば匠の嫁さんも名前で呼んでるな。さすがに呼び捨てはしてないけど。……って、おい。不機嫌な顔してんじゃねーよ。家族に嫉妬すんな」 「試しに一回だけ万嶺って呼んでみろ」 「ヤダ」 「ヤダじゃない」 「じゃあ無理」 「無理でも頑張れ」 「頑張るようなことじゃねーしっ」  松岡と交す取り留めのない会話が貢は好きだ。
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