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「クソッ…あと少しだったのに…。」
僕は届かなかったことに舌打ちをした。
風も吹いて少し冷えた11月のおよそ22時頃、今晩は暖かいとか言ってた天気予報のおかげで冷えてしまった身体が暖を求めていた。
そんなことを頭にちらつかせているとさっきの2人の人影が見えた。2人とも男性で1人はいい具合に筋肉もついてがっしりしている。もうひとりは中肉中背、40代といった印象…。門番の役割は実質1人だと見た。
僕は建物の影に隠れながらすっかり冷えてしまった壁という壁を伝い、じっくりかけて門の前の建物まで来た。
「この距離なら…確実に届く…!」
僕はいつものように右手で拳を作りそれを左手で包んだ。そして、息を吹きかける…
ボウッ!
刹那、それが合図だったかのようにがっしりとした方の門番はガクリと意識を失った。
「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」と中肉中背の中年男性は心配する。
「…ごめんなさい、ちょっとクラっと来ただけです、もう大丈夫ですよ。」
そう言った彼をニコリと「笑わせた」。
「ふぅ…なんとか憑依成功…。ここからですな…。ううっ、寒い。」
僕は門番にバレないように、キラキラと星が光る夜空の下で暗く静まり返った住宅街を駆け足で帰路についていた。
「憑依対象の名前はシュン、年齢は22…なんだ、意外と若いのに門番なんてするんだな。若いししっかり動かせて諜報活動しますか…。」
手のひらを擦り合わせながらそう、呟いた。
なぜなら僕は、自分の意識を分割、それを飛ばして憑依させることで相手の行動を操れる「マリオネッター」であり、
その力で諜報活動をする遠隔操作型スパイなのだ。
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