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ねだればなんでももらえる時を過ぎて
いつかはサンタになる日が来ると
知ったのはいつだっただろう
18の冬、僕はトナカイになっていた
「待って、諒くん、一緒に見よう」
「いいって、1人で見るから」
トナカイのそばにはサンタがいた
正確にはサンタのコスプレをした
コンビ二バイトの彼女なのだが
江古田駅すぐ近くのコンビ二
クリスマスディスプレイの店内
1冊のマンガ雑誌の前で押し問答している
サンタとトナカイ
なんて滑稽なクリスマス
「……」
新人賞結果発表のページを見て
まおは黙ってしまった
きっとまた落選したのだろう
「僕にはマンガ家の才能ないのかも」
「まだ2回目だって、諦めるの早いよ」
まおサンタがトナカイの頭を叩く
「がんばろ!」
彼女はこんな僕のことをいつも応援してくれる
嬉しい反面、その言葉がつらいことも
「よし、目指せ100万部作家!
画材代稼ぐぞ~」
クリスマスケーキの箱を抱えて外に出る
師走の夜空は優しくない
着ぐるみの中にも凍てつく波動を送り込んでくる
逆らうように声を張り上げた
「ケーキはいかがですか!」
僕の横に寄り添って立つまお
「賞を取るまでクリスマスはお預けね」
お前にはもったいない彼女と
よく言われる
それほど、まおはかわいくて優しい
「はい、ぽかろん、あったかいよ」
「サンキュー」
優しすぎて、俺は…
「今日は何時に待ち合わせする?」
「まおの好きな時間で良いよ」
時々、彼女の目を見ることができない
そんな自分がたまらなく嫌で
自分で自分がうっとうしくて
余計に彼女の目を見ることができなくなっていた
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