2#牡子牛との約束

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 「ねえ、牝牛さん。牝牛さん。ちょっと!」  「なによ?」  牝子牛の蒙子は、キッ!とその声の主を睨み付けた。  「そんな、キツイ顔をする理由解るよ。この僕も・・・」  牡子牛はそこまで言うと、鉛色の空を見上げた。  「俺のママ、『肉』になったんだ。君もそうなの?」  牡子牛はそう言うと、呆然とする牝子牛の蒙子の鼻と自らの鼻をそっと押し付けた。  ・・・何だろう・・・  ・・・この優しい感触は・・・  「俺、『日陽丸』(ひざしまる)って言うんだ。君は?」  「私・・・わたしは『蒙子』っていうの。わたしのママもあんたと同じく、売られて『肉』になったの。」  「そうなんだ・・・同じだね。」    ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・  ・・・これって、恋っていうの・・・?  ドキドキドキドキドキドキ・・・  「ねえ・・・」  「なあ・・・」  「大きくなったら、あたしと一緒になろうね・・・!」  「大きくなったら、俺と一緒にならないか・・・?」  「あっ・・・!!」  「あっ・・・!!」    2頭の子牛は、交わす言葉が異口同音だったので、お互い目をそらして恥じらった。    「私、あんたの子牛を産みたいの・・・」  「俺、お前の子牛を・・・」  「『結婚』しよう!」  「『結婚』しよう!」  じろーーーーーっ。  その瞬間、他の子牛達の視線が2頭に集まり、蒙子と日陽丸はそそくさと寄り添って、この場をさっさと歩いて逃げた。      
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