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「ホントに?陣内じゃなく?」
両肩を掴んで覗きこむ神崎君の距離に体を引きながら。
こくこくと首を縦に振った。
「はぁ、マジで間に合った」
そう呟いた神崎君は困ったように微笑んだ。
「さっき、陣内にすげー怒られた。お前何やってんだって。そんなことなら俺が先に貰う、俺を好きになるのも時間の問題だって言われて、」
神崎君の言葉が途切れた瞬間、イルミネーションの光が全部一瞬で消えた。
驚く間もなく、私の体は大きな熱に包まれて。
「成宮……俺と付き合ってくれ」
耳元で聞こえた声に、ジワリと涙が浮かんだ。
「はい、」
暗闇の中、抱きしめられた体が離れ、頬に大きな手があてがわれる。
するりと滑ると顎を持ち上げて。
―――唇が暖かくなった。
ぱっと周りが明るくなり、またイルミネーションがキラキラと光り出す。
何も言わず私の頬を伝う涙をぬぐった彼は、覗きこむようにしてふわりと微笑むと頬を染めた。
「恋人たちの一分間、らしぞ」
「ふふっ、周りもカップルだらけね」
「俺たちも仲間入りだな」
2人でツリーを見上げて、そっと繋がれた手に視線を彼へと向けた。
「今日はまだ、いいだろ?」
イブの残りはまだ少し。
引かれる手が持ち上がり、神崎君が指にキスをして。
それからふいに立ち止ると、
ちゅっ、
今度は唇にキスが落ちる。
私の“片思い”は、白い息とともに消えた。
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