19/20
前へ
/22ページ
次へ
「ホントに?陣内じゃなく?」 両肩を掴んで覗きこむ神崎君の距離に体を引きながら。 こくこくと首を縦に振った。 「はぁ、マジで間に合った」 そう呟いた神崎君は困ったように微笑んだ。 「さっき、陣内にすげー怒られた。お前何やってんだって。そんなことなら俺が先に貰う、俺を好きになるのも時間の問題だって言われて、」 神崎君の言葉が途切れた瞬間、イルミネーションの光が全部一瞬で消えた。 驚く間もなく、私の体は大きな熱に包まれて。 「成宮……俺と付き合ってくれ」 耳元で聞こえた声に、ジワリと涙が浮かんだ。 「はい、」 暗闇の中、抱きしめられた体が離れ、頬に大きな手があてがわれる。 するりと滑ると顎を持ち上げて。 ―――唇が暖かくなった。 ぱっと周りが明るくなり、またイルミネーションがキラキラと光り出す。 何も言わず私の頬を伝う涙をぬぐった彼は、覗きこむようにしてふわりと微笑むと頬を染めた。 「恋人たちの一分間、らしぞ」 「ふふっ、周りもカップルだらけね」 「俺たちも仲間入りだな」 2人でツリーを見上げて、そっと繋がれた手に視線を彼へと向けた。 「今日はまだ、いいだろ?」 イブの残りはまだ少し。 引かれる手が持ち上がり、神崎君が指にキスをして。 それからふいに立ち止ると、 ちゅっ、 今度は唇にキスが落ちる。 私の“片思い”は、白い息とともに消えた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加