白い息と消えた

＊

「っ、んっ、え？そう？」

口に放り込んだミニトマトを飲み込んで、やっと返事する。

「んー。いっつも野菜ばっか」

長い指が私の器を指差して、神崎君は苦笑より柔らかく顔を緩めた。

「あ、唐揚げは好きだろ？食ってる時幸せそうな顔してる」

「えっ！どうしてそれを！！」

確かに私は唐揚げが好きで、この間も同僚との忘年会で目の前の唐揚げを真っ先に食べた。

「どうしてってそんなの、見てるからだろ？」

ぼっ！！

音がしたかと思うくらい、一瞬で顔が熱くなり、赤くなったのがわかる。

目の前に座る八重子がにやりと口の端を持ち上げ、その隣の陣内君もにやりと笑みを漏らした。

「そういや俺さー、ずーっと気になってたんだよね」

少し体を乗り出すようにして、陣内君が神崎君を覗き込むようにする。

「神崎、やたら成宮に急ぎの仕事頼むだろ？あれ、どういう心境？」

「それは私も思ってたわ。一番忙しい栞にわざわざ頼むんだもの、ねぇ？」

花音にまで覗きこまれて、神崎君は僅かに体をのけぞらせた。

２人は私に視線を向けると笑みを深くする。

意味深な笑みに困って、僅かに首を横に振った。

「なんでって……成宮を信頼してるから」

「へぇー？」

話を聞いていた周り中からの返事にたじろいで、神崎君はちらりと私を見る。

私の顔はますます赤くなる一方で、慌てて頬に手を当てた。

「あー……成宮、もしかして困ってたか？」

「え、あ、いや、別に、困ってはいない……です」

ニヤニヤするみんなの視線に、俯いて返事するのがやっとだった。