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今日は雛子ちゃんがいないせいか、気分よくお酒が進む。
ほろ酔いで頬が火照るのを自覚して手で仰ぐ横、ふっと息を吐く声に振り返った。
「お前なぁ。最初に言っただろ?あんまり飲むなって。また具合悪くするぞ?」
「それはベタコのせい」
ぼそりと呟かれた声は七瀬君のもので。
私はこらッ!と視線を送って、慌てて口を開いた。
「大丈夫!今日は大丈夫みたい」
「そうか?まぁ、今日は大丈夫そうではあるが……逆に心配だから、送って行くから」
覗きこむ瞳に笑みが洩れて、コクリと頷いたのは酔った私。
既にふわふわとした意識に、コレは酔ってるなぁなんて自分でわかるんだから、まだそれでもちゃんとしてる方だろう。
クリスマスイブに、良い事起こったなぁ。
ぼーっとした頭で考えていたら。
「せーんぱぁーい!」
聞こえてきた甘ったるい声に、一瞬で酔いが覚めたようだった。
「あら、雛子ちゃん何しに来たの?」
「神崎せんぱいのところに来ただけでぇーっす」
八重子の嫌味にもあっさり返す雛子ちゃんは、神崎君の隣に座ると彼の腕に自分の腕を絡ませた。
「せんぱぁい、今日も送ってくださぁい。美味しいケーキ、ウチに用意してあるんですぅ。この間みたいに、ウチに寄って行ってくださいね?」
きゅっと首をかしげて覗きこむようにした雛子ちゃん。
私は完全に固まって、彼女の言葉だけが頭の中を駆け巡った。
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