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歩いて歩いて、それから歩調を緩めてとうとう立ち止った。
大通りと飲み屋街の間にある道路は灯りが少ない。
足音はギシギシとも、ギュっギュっとも鳴って、白く浮かぶ街の遠くに向けた視線を空へと向けた。
はぁ、
吐いた息は白く上がり消える。
一瞬で消える白は、さっき舞い上がった私の心みたいだ。
……浮かれて顔赤くするとか、恥ずかしい。
考えて見ればわかるじゃない。
年下の可愛い女の子の方が良いに決まってる。
見上げていた空からはいつの間にか雪が降りだしていて。
小さかった粒はふわりとした大粒に変わった。
雪が僅かな光を反射して、暗い空が明るくなる。
羽根が舞い降りるように降ってくる雪に、ほぅ、息が洩れて。
ふわふわ漂う雪に、自分も空を飛ぶ感覚。
「きれい」
気がつけば涙がこぼれていた。
イブの夜に1人で泣いてる。
心の中で自分に呆れたため息を漏らし、開き直って空へと手を伸ばした。
雪の結晶はあっという間に溶けて雫に変わる。
「あーあ、」
呟いて、もう一度空へと手を伸ばした。
彼は今頃、雛子ちゃんを送って行ってるんだろうな。
彼もこの空を見てるだろうか。
ううん、きっと。
彼は腕に絡む可愛い女の子を見てるだろう。
どうしてもあの鋭い視線には勝てない。
もともと消極的な部分があることは否めない自分の性格に、呆れた乾いた笑いが洩れた。
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