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「やーっと納まる所に納まったわね!」
翌日の25日は金曜日だからもちろん仕事はありまして。
お昼の食堂の片隅にいつものメンバー、同僚たちと纏まって座った私は八重子に大きなため息を吐かれていた。
「アンタ達見てる私たちもじれったいったらありゃしないわよ」
花音は私にちらりと見ると、ねぇ?と神崎君へと視線を流した。
「……お前らの中でどんな話になってたんだ?」
「神崎も成宮もあからさまだっていうのに、お互い気付かないわ、余計な女が煩いわで、俺らもどうしたらいいものかと困ってたっつーの。俺らがお互いの気持ちを勝手に言えねーしさ」
陣内君はぐるり天井を仰いでそう言うと、でも、呟いた。
「俺も本気だったけどね、栞ちゃん?」
げほっ!!
むせて咳き込んだ私の背中を神崎君がさすった。
「陣内、ちゃっかり気安く呼ぶな」
「あれー!もう彼氏面!!」
「俺はもう彼氏だ」
神崎君と言いあう陣内君だけど、お互い本気ではないみたいだ。
私は呆れたように肩を持ち上げた陣内君に視線を向けた。
「陣内君、ありがと」
それは全部含めて。
彼はフッと、でも少し切なそうに微笑んで、一度目を伏せると私を見て悪戯に瞳を光らせた。
「じゃあ、陣くんって呼んでよ」
「あ、こら!お前はまた!」
「あー、それそれ!神崎は女の子では栞ちゃんにしかお前っていわないの!俺は気付いてたぞー」
知らなかったとばかりに目を見開くのは当の本人と私。
「今日は2人でクリスマスデートかぁ。いいなぁ」
八重子の声にちょっと頬が染まりつつ、神崎君を見上げたら。
ぽんぽん、頭に大きな手が載って数回跳ねた。
~fin~
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