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「神崎せんぱぁい、雛子、酔っちゃったぁー」
雛子ちゃんはふにゃりと体を揺らして神崎君にしなだれかかった。
一瞬眉がよりそうになり、慌てて平静を勤めようと目を伏せた。
「おいおい姫野、とりあえず水飲め」
コップのお水を雛子ちゃんに渡す神崎君は、なんだか甲斐甲斐しくお世話する彼氏の様に見えて。
それから、私はただ彼を想うばかりで、それに比べて積極的な雛子ちゃんがうらやましいと思えた。
「成宮、お前大丈夫か?」
「っんっ!?」
神崎君に急に覗きこまれて、驚いてしまった。
至近距離のその顔は見れば見るほど自分の好みで。
細すぎず、でも太すぎない眉はきりっとしてて、目は少し垂れている。
すっと通る鼻筋に形の良い唇。
じっと見つめられたら、耐えきれずに目を伏せた。
「お前、顔色悪いぞ?」
「そりゃ、こんな状況で飲めば悪酔いもするわよ」
しらっと言うのは八重子で、“こんな状況”と言うのは、彼女がほんの一瞬視線を向けた雛子ちゃんを指しているのがわかった。
「の……飲みすぎちゃったかも!大丈夫!今日はもうお開きでしょ?真っ直ぐ帰るわ」
八重子の出すチクリとした雰囲気を紛らわすように慌ててそう言った。
「なら俺が送っていく」
えっ?
ドキリとして顔を向けた先には、雛子ちゃんの凄まじい視線があって。
「せんぱぁい、雛子送ってくださぁい」
その甘ったるい声に、私は慌てて首を振った。
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