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「成宮……そんなにアイツの事、好きなんだ?」
陣内君はコートのポケットに手を入れて私をじっと見つめた。
“そんなに”とは果たしてどれくらいの事なのか。
私としては、まだそれほどのめり込んではいないはずだけれど。
答えに困って視線を逸らした私に、陣内君はフッと微笑んだ。
「少なくともさっきの話だと、成宮は山上に気持ちを話してはいなかった。だけど山上は気がついていた。驚かなかった七瀬も気がついていたみたいだし、俺も実はずっと気がついてたよ」
……それって、みんなが気付くほど、私はわかりやすいってこと?
しかも“そんなに”と言われるほど?
私の心の中を読んだかのように、陣内君は微笑んでコクリと頷いた。
「ま、肝心のアイツには気付かれてないみたいだけど」
悪戯に笑みを変えて覗きこむように屈むと、ぽんぽんと私の頭を撫でるようにした。
「ははっ、雪だるまになっちゃうな!」
首にかけるだけになっていたマフラーを陣内君がふわりと巻き直してくれて、そして少し背中を押して歩き始めた。
「今日はこのまま俺に送られなよ」
「……ん」
コクリと頷いた頭にもう一度ポンと乗った手は温かい。
「なぁ、成宮」
「うん、」
「アイツとうまくいかなかったらさ、本当に俺との事考えてよ」
私が神崎君を好きだと知っていて、それでもそんなことを言ってくれる。
なんだか胸が苦しくて、マフラーに顔をうずめた。
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