第1章

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雨が休みなく降り続いている。 この雨はいつから降っているだろうか。 覚えている限りでは2ヶ月は続いている。 俺は田舎から上京してサラリーマン2年目になる。 今日は取引先の都合で遠くへ出掛けていた。 それはたまたま自分の故郷だった。 今は帰りのバス待ち中。 こんなど田舎になるとバスは1日3本だけ。 待っているのは俺1人。 待ち時間は森を眺めるしかない。 「はあ、あと10分早かったらな。」 1本バスを逃した。 バスが次に来るのは・・・5時間後。 ずっと立ちっぱなしか。辛いな。 それにしても、懐かしいな。 このバス停は子供の頃からよく使っていた。 唯一遠くへ行ける交通手段だから使わざるを得なかったんだけどね。 俺は黒い傘を片手に思い出に浸っていた。 すると赤い傘を差した小さな女の子が黄色い長靴で水溜りを嬉しそうに踏みながら俺の隣に並んだ。 1人かな?こんな小さな子供まで何時間と待たされるなんて考えると心苦しくなる。 「お兄ちゃん、雨は好き?」 「・・・え、俺?」 赤い傘に隠れて顔が見えない。 周りには俺しかいないからなぁ。 「そうだよ!スーツのお兄ちゃん!」
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