第1章

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「ねえお兄ちゃん、好きな食べ物なに?」 不意に話を変えられた。 なんでも聞きたがる年頃って、あるよな。 「俺はね、ハンバーグかな。」 子供の頃、お母さんが作ってくれたハンバーグが好きだった。 実家に帰ると今でも作ってくれとお願いをするくらいだ。 「そうなんだ!私はね、フルーツが好き!」 おお、これは幅広いな・・・。 「どのフルーツが好きなの?」 少女はうーんと考えている様子だ。 「しんちゃんが取ってくれる柿かな!いつでも食べたい時にくれるって約束してくれたんだ!」 結局しんちゃんに結びついた。 あれ?なんだろう。 ふと何かを思い出しそうになった。 でも、何を・・・? この子を知ってる・・・? 顔を見たいが傘で隠れてどうしても見えない。 「ねえ君、どっかで俺と会ったこと、ある?」 少女は黙り込んだ。 ピクリとも動かない。 「そ、そんなわけないよね。ごめんごめん。」 すると少女はポツリと呟いた。 「最近しんちゃん柿くれないなー。」 傘を上げ顔を見せた少女は俺に向かって言った。 「柿くーださい!」 その顔に見覚えがあった。 「あ、え?嘘だろ。・・・美加?」
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