第1話 かつての英雄は低年収社畜

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生牡蠣とは何だ生牡蠣とは。 殻を剥いた物にレモンと醤油を直接垂らし、それ以外の無粋な味付けはせず一気に頬張る。 歯を食い込ませた瞬間プリッと身が弾け、喉をツルツルと滑り落ちて行く。 ああ、少しだけ焼いて半生で頂くのも悪くない。 知らないぞ、私はそんな高級品は知らない。 私にとって生牡蠣とは、スーパー等で売ってる殻から外され袋詰めされたアレだ。 尤も、残念ながらそれも食べた事は無いが。 私が口に出来る牡蠣は、スーパーヤマヅキで半額以下に値引きされた廃棄寸前の湿気たカキフライだけだ。 「…………………………タルタルソースが欲しくなるなぁ。」 卵とマヨネーズという一見油物にはヘビーに思えるソースだが、 何故かカキフライには絶妙に合うという神秘的なソース。 実はタルタルソースだけでご飯一杯いけたりもする非常に有能なソースだ。 しかし最近お目にかかる機会が全然無くて寂しい。 『……………私、見たんです。 あの日は雨で、一日薄暗くて君が悪くて…………そんな時突然─────』 チャンネルを回していると、 『見た! 霊の恐怖!!』 という如何にもで三流臭のする心霊番組に行き着いた。 演出も安っぽいが、心霊番組自体最近では珍しい。 これを見て今日は寝るとしよう。 土日とは、往々にして何も出来ないものである。 丸2日自由なのだから、普段は出来ない事をしようと金曜日の夜中に考えるも土曜日はほぼ何もせずダラダラと過ごす。 そして夕飯頃になって少し焦り台所に溜まった食器を片付けゴミを纏めるも、 一度テレビを付けてしまうと面白くもない番組ながらボーッと見てしまう。 そうしている内に時計は12時を指し、明日こそは無駄にすまいと自分に言い聞かせ布団に入る。 入ったは良いものの眠れず充電しながら携帯を弄り、いつの間にか眠りに着き起きれば昼近く。 そこでまたダラダラと布団から出られず、昼食が2時頃になり3時頃から意味もなくフラッと出掛けて6時頃帰る。 夕飯の支度をしていると国民的アニメの時間となり、それで明日は月曜日であると自覚させられ憂鬱になる。 絶対にこのパターンだ。 それで激しく後悔する。 この2日間、貴重な休みに自分は何をやっていたのだと。 今度こそ有意義な休日にすると誓うも、やはり同じような流れで無駄にしてしまう。
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