第1話 かつての英雄は低年収社畜

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しかしそれでも世界の各地で潜伏するレジスタンスにとっては吸血鬼の支配に抗う象徴のようなものであるため、 秘密裏に協力する有力者も多く未だしぶとく活動を続けている。 とは言っても、10年前日本政府が神聖ワラキア皇国に降伏すると同時に中核メンバーが脱退。 高位の吸血鬼に対抗し得る最高戦力の喪失により、日本解放戦線の戦力は大幅にダウン。 そのため10年前のように吸血鬼との大規模な戦闘には踏み切れず、 出来る事と言えばコソコソ動いて吸血鬼関連の施設を爆破したり何なりとテロ活動を行う程度だ。 低級の吸血鬼も何匹か殺してるし他のレジスタンスと比べれば頑張ってる方だが、 残念ながら日本を解放するというのは夢のまた夢に過ぎない。 『古越教授、この事件をどう思いますか?』 『全く以て愚かとしか言い様が無いですね。 私達日本人は皇帝陛下の深い温情により、神聖ワラキア皇国準1級国民の地位を頂いています。 にも関わらず、彼ら日本解放戦線は陛下の愛も理解せずこのようなテロ活動を繰り返してばかり。 理解出来ませんよ、本当に。』 『彼らは一体何が不満なのでしょうか? 私達準1級国民の日本人は吸血鬼様とほぼ対等に商売等をさせて頂いています。 これ以上何を望むのでしょうか?』 『彼らに高尚な考えなんてありませんよ。 旧国防軍の元軍人のように、ただ単純に暴れたい。 或いは、体制に逆らう自分がカッコ良いと思っているのでしょう。』 全否定。 日本解放戦線を悪と断じ、吸血鬼を正義とする。 何の不思議も無い。 これが今の世界の形なのだ。 全世界が神聖ワラキア皇国の支配下に置かれ、支配層に吸血鬼が君臨する。 どのような状況如何なる理由があったとしても、人間と吸血鬼ならば吸血鬼の方が正しい。 今の世界はそういうものだ。 「………………つまらんな、他のを見るか。」 どうやら今日のニュースは吸血鬼の屋敷を爆破した事件で終始するらしい。 フリップボードが出された辺りで、見切りを付けて他の番組に変えた。 『見て下さいこの大きさ! 何とこの取れ立ての牡蠣を、この場で頂いちゃいます!!』 「くたばれ。」 作ってから大分時間が経ち湿気たカキフライを食べていた丁度その時、 テレビのタレントが船の上で生牡蠣を食べようとしている所が撮し出された。 当然直球で嫉妬と怒りをぶつけた。
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