第1章

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あの時を思い返すと、運が良いのか、悪いのか、分からなくなる。 あの時俺は…………。 俺は工具箱の中から、俺の100キロを軽く超える体重を支えられそうな紐を数本取り出し、脚立と共に持つと、アパートの裏にある林に向かう。 前から目に付けていた大木の脇に脚立を立て、その上に立ち、大木の太い枝に紐を結ぶ。 結んだ紐の反対側に輪を作りその輪に首を入れ、何の未練も無い現世とオサラバする為、脚立から飛び降りる。 飛び降りた途端に、紐がブチっという音と共に切れ、俺は紐と共に落下、大木の根元から伸びる太い根っこに尻を激突させた。 その痛みと衝撃で俺は悶絶し暫く意識を無くしたが、尻の痛みで直ぐに目を覚ます。 尻の痛みに耐えながら、持ってきた紐の中で切れた紐より丈夫そうな紐を選び直し、また脚立に登る。 太い枝に紐を結び輪を作り首を入れ、今度こそはと脚立から飛び降りた。 今度は紐が切れる事はなかったが太い枝が折れ、俺はまた先程の太い根っこに尻を激突させ、その衝撃と痛みで悶絶する前に、頭に太い枝が激突する。 一晩中俺は気絶していたようで、早朝の冷え込みで目を覚ました。 起き上がろうとしたら、頭と尻に激痛が走る。 頭と尻に手を当てると、頭にでっかい瘤が出来、尻が腫れ上がっていた。 痛みに呻きながら立ち上がろうとしている俺の耳に、林の中に人が入ってくる音が聞こえてくる。 頭にでっかい瘤を作り、尻を晴れ上がらせた無様な姿を人に見られたくなかった俺は、痛みに耐え、息を殺して身を隠し、音が聞こえてくる方を注視した。
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