第1章

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林の中に入って来たのは、同じアパートに住む最近ヤクザから足を洗ったという噂の、中年の男だった。 男は俺に気が付かず、周りを見渡してから持っていたスコップで穴を掘る。 穴を掘り終わると、コンビニの袋に入った何かを穴の中に放り込み、穴を埋め戻す。 埋め戻した穴の上に周りの落ち葉を振りかけ、周りと見分けがつかないようにしてから、男は周りを見渡しながらアパートの方へ戻って行った。 俺は男が戻ってくる事を警戒し、1時間程寒さに震え痛みに耐え、その場で待機。 日が昇り朝の冷え込みが緩んで来た頃俺は動き出す。 痛む頭と尻を庇いながら穴が掘られた所に這いずって行き、落ち葉をかき分け素手で穴を掘る。 穴の中からコンビニの袋を引きずり出し、袋を引きちぎった。 袋の中から出てきたのは、新聞紙に包まれたL字の形をした何かである。 新聞紙も引きちぎり中身を取り出す。 !? 回転式拳銃だった。 アメリカの拳銃を模範した、東南アジア製の模造品のようである。 俺は拳銃に弾が装填されている事を確認。 撃鉄を起こし、こめかみに当て引き金を引く。 ガチン! 不発だ。 もう一度撃鉄を起こし引き金を引く、ガチン! また不発だ。 もう一度撃鉄を起こし引き金を引く、ガチン! もう一度、ガチン! もう一度、ガチン! チクショ――。 俺は持っていた拳銃を近くの木に叩きつけた。
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