自分の未来

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だがオーディンは感覚的に、現在彼の中にある魔力の量は…自身のそれに及んでいないということを確信していた。 そして、いくら魔力のリミッターを切り続けていると言っても…動きを阻止しようとした自分を軽く薙ぎ払い、瞬く間に飛来するグングニルへ追いついて高強度の結界を瞬時に形成し、無理やりにグングニルを空へ投げ飛ばした今の一連の流れの中で……身体強化にも相当の魔力を使っているだろうと、容易に予想ができる。 破壊属性の特性は消滅。その魔力の量に応じて対象を文字通り消し去る。消滅させるのだ。 つまり…今お互いの魔法が衝突すれば、拓也は勝てない。自分諸共、背後の王城、人々も…無に帰すということになる。 「何のつもりか知らんが、この程度で主は死なんだろう。」 その気になれば、奴ならば躱すだろうという期待の元…オーディンは魔法を発動させた。 捩じれる二つの…嵐を圧縮したように半透明な柱が、螺旋を描き…拓也、そしてその後ろの王城ごと飲み込もうとうねり、襲い来る。 そんな中で…未だ拓也は笑っていた。同時に灰色で縁取られた魔方陣の外円がようやく完成した。ぶつける…どころか、発動すら間に合いそうにない。 それなのに…拓也は笑っていたのだ。 「なぁ、オーディン。 俺が意味もなく…体に負荷を掛ける魔力リミッターの解除をし続けてたとでも本気で思ってるのか?」 拓也がひと際不敵に笑ったその刹那……。魔方陣の周囲を、二つの陽炎のようなモヤが取り囲み急速に回転を始めた。 そして……。 「ッバカな!?魔力が足りていないはずッ!!!」 瞬きを一つする程度の僅かな時間で……巨大な魔方陣、その内側が細部に至るまで構成されていた。 灰色の外円に…その内側には、すべての魔力の色…すべての属性が含まれている。 次の瞬間…拓也が作り出した魔方陣から、オーディンの魔法と同じく灰色の半透明な嵐のような魔力を纏った長い龍が如き姿の魔法が飛び出した。 一体どこからそんな膨大な量の魔力を…そう言いたげなオーディンに、拓也は口角を釣り上げたまま吐き付ける。 「最初に出したホログラム…徐々に消していったが…七体を残していた。そこに……ずっと…俺が練った魔力を送り、貯めていた。」 「ぐッ!!では我と戦闘をしながらそんな緻密なコントロールをしていたとッ!!あれ程に磨き抜かれた動きをしながらッ!!!」 「あぁッ!!!脳ミソがグチャグチャになりそうだったけどなァァァッ!!!! 一体につき俺の許容限界分貯めているッ!!テメェが長々と舐めた戦闘してくれたおかげだなッ!!!」 魔力量許容限界。これを超えて魔力を体内へ蓄積すれば死ぬ。それが魔力リミッターを切った時の最大のデメリット。 それならば、体内に蓄積せず一度解放し…その後コントロールし、貯めておけばいいのではないかと考えた末に生み出された、拓也の離れ業。 片方の鼻から血を流しながら…左手でクシャりと自身の黒髪を鷲掴みにし、一つの情報も逃してなるものかと目を見開いて…感覚を研ぎ澄まし魔法をコントロールする彼は、オーディンの目には狂気染みて映るのだった。
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