新たな物語の始まり

2/10
11661人が本棚に入れています
本棚に追加
/1285ページ
東の空が赤く染まる。 今日も…昇る太陽。いつも通りの日常。 東の果てから差し込む朝日は、此処…『エルサイド王国』の王都を今日も照らす。 そのエルサイド王国の王都内の少し外れ…小高い丘のようになっており、人気が無い場所にぽつんと立つログハウスのような一軒家。 その中から一人の人物が眠そうに玄関を開けながら現れた。 黒髪黒目のその人物の手には、鞘に収まった剣。 「ったく…まだこの時間は少し肌寒いな……」 腕をしきりに擦りながら、気怠そうにそう呟くと、鞘に収まっていた剣を抜き放ち、素振りを始めた。 決してイケメンではないこの青年。名は鬼灯拓也。 元異世界人であり、次期『時空神』というなんとも奇妙な人物である。 そんな彼はある一人の人物を護るためにこの世界へやってきた。今では縁があり、その人物とは恋人同士。 そして…彼は、大好きで愛おしい彼女を護るため…こうして今日も鍛錬を積むのだ。 「あぁ~…今日の朝飯なんだろうな……」 「今日は拓也さんの好物のサバですよ。味噌汁もあります」 「……それは実に楽しみだ」 いつからそこに居たのだと驚きの表情を浮かべながらも、素振りは止めずにそう返す。 この銀髪蒼眼の美少女こそ…彼の護衛対象であり、恋人の『ミシェル=ヴァロア』 実にクールな雰囲気を帯びている彼女。そんな彼女がほほ笑んだその表情は、表現が出来ないほどに美しい。 「ちなみにお弁当は?」 「ふふふ~、内緒です。拓也さんはいつも楽しみにしてくれていますから」 「なるほど、ミシェルは楽しみは後に取っておくタイプか…」 他愛も無い会話を繰り広げる二人。 最早その姿はさながら新婚夫婦のそれであるが…勘違いしてはいけない。彼らはまだ恋人同士である。 「それでは私は戻りますね。まだやることがありますので」 「あいよー。俺も6時ごろに戻るわ~」 現在時刻は午前5時30分。彼の毎朝の日課の素振りは、今日も欠かさず行われている。 ミシェルはまだやることがあると言い、家の中へ戻って行った。 拓也は再び一人になった庭で、ポツリと呟く。 「俺たちももう3年生か…早いなぁ……」
/1285ページ

最初のコメントを投稿しよう!