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東の空が赤く染まる。
今日も…昇る太陽。いつも通りの日常。
東の果てから差し込む朝日は、此処…『エルサイド王国』の王都を今日も照らす。
そのエルサイド王国の王都内の少し外れ…小高い丘のようになっており、人気が無い場所にぽつんと立つログハウスのような一軒家。
その中から一人の人物が眠そうに玄関を開けながら現れた。
黒髪黒目のその人物の手には、鞘に収まった剣。
「ったく…まだこの時間は少し肌寒いな……」
腕をしきりに擦りながら、気怠そうにそう呟くと、鞘に収まっていた剣を抜き放ち、素振りを始めた。
決してイケメンではないこの青年。名は鬼灯拓也。
元異世界人であり、次期『時空神』というなんとも奇妙な人物である。
そんな彼はある一人の人物を護るためにこの世界へやってきた。今では縁があり、その人物とは恋人同士。
そして…彼は、大好きで愛おしい彼女を護るため…こうして今日も鍛錬を積むのだ。
「あぁ~…今日の朝飯なんだろうな……」
「今日は拓也さんの好物のサバですよ。味噌汁もあります」
「……それは実に楽しみだ」
いつからそこに居たのだと驚きの表情を浮かべながらも、素振りは止めずにそう返す。
この銀髪蒼眼の美少女こそ…彼の護衛対象であり、恋人の『ミシェル=ヴァロア』
実にクールな雰囲気を帯びている彼女。そんな彼女がほほ笑んだその表情は、表現が出来ないほどに美しい。
「ちなみにお弁当は?」
「ふふふ~、内緒です。拓也さんはいつも楽しみにしてくれていますから」
「なるほど、ミシェルは楽しみは後に取っておくタイプか…」
他愛も無い会話を繰り広げる二人。
最早その姿はさながら新婚夫婦のそれであるが…勘違いしてはいけない。彼らはまだ恋人同士である。
「それでは私は戻りますね。まだやることがありますので」
「あいよー。俺も6時ごろに戻るわ~」
現在時刻は午前5時30分。彼の毎朝の日課の素振りは、今日も欠かさず行われている。
ミシェルはまだやることがあると言い、家の中へ戻って行った。
拓也は再び一人になった庭で、ポツリと呟く。
「俺たちももう3年生か…早いなぁ……」
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