第5章 私

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二駅が過ぎた。特急との連絡となる停車駅で多くの人が降車する。 「あ、降ります降ります。」 後ろからさっきの人が、爽やかに手を挙げて私の横をすり抜けて行った。 『あ~あ行っちゃった。』 別に淡いロマンスを夢見ていた訳ではないのだけれど、いつもの通勤電車にはない展開をちょっぴり期待していた。 ドアを降りる彼を見送っていた時、ハッと気がついた。 彼がひょこひょことびっこを引いて右足を引きずっていることに。 「すみません。私も降ります!」 乗りこんでくる乗客を押しのけて、弾かれる様に私も後を追い掛けた。 これも脊髄反射的っ奴かしら。 彼は……あの人はどこへ行っちゃったろう? Σいた!ベンチに腰掛けていた。うわ靴と靴下を脱いでる。 どうしようどうしよう。そうだとりあえず……。
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