第3章 私

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ギーーッ!大きなブレーキ音と共に電車が大きく横揺れする。 私は体勢を崩して背後によろめいた。 「痛ェッ!」 後ろから若い男の悲鳴が上がる。 いけない、パンプスの踵で男の甲を踏みつけてしまったのだ。 「ヤダ、ごめんなさいごめんなさい。」 「あ、大丈夫大丈夫。大して痛くもないのに、つい、脊髄反射的に痛いって言っちゃった(笑)」 そんな訳ない。凄い勢いよく踏みこんでしまったもの。相当痛かったハズだ。 「本当にすみませんでした。気をつけます。」 「うん。もう気にしないで。」 「ありがとうございます。」 お礼を言うのも何だかヘンな感じだが、好意に甘えさせてもらうことにした。
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