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私の髪はずっと、ずーっと、おさげのまま。
そのおさげも長さだけは変わって、細く長くなっていき、私は二十歳になった。
机の中を掃除していると、いつもこの箱を持ったまま、止まってしまう。
中には何が入ってるんだろう。
でも蓋も継ぎ目も見えなくて。
冷たくて冷たくて、暖かくて。
「だめだめ、約束だもん」
中を見たい衝動をいつも、抑えてる。見ようにも、開かないんだけど。
手のひらに乗せてベッドに腰掛け、仰向けに倒れた。
小さな箱を指で摘まんで、透かしてみる。小さい頃にも何度もやった。中が見えないのはわかってる。
「大人になるまでって、いつまでだろう……」
呟きが静まった部屋に溶けた。
「そろそろ、いいかな」
私のじゃない声が、頭の上から聞こえる。いや、それはもう、顔の前。
寝転がっている私の顔の前に、十七、八くらいの歳の男の子の顔があった。
「驚かないでね、僕だよ……って名乗ってもいなかったかな」
ペラペラと喋っている男の子の下で、私は驚き固まっていた。
だって、この人、浮いている。
固まっている私を見て彼は「あれ、金縛り?」なんて笑っている。
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