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「わ、笑い事じゃないよーっ」
「ふふ、約束守ってくれてありがとうね」
この会話、覚えがある。
あの時より成長していて、気付かなかったけど、やっぱりこの男の子は、公園でうずくまっていた男の子だ。
私は無理やり体を起こして、背中を丸めた。
「……し、死んじゃったの?」
私がもっと早く人を呼べてたら……と、顔が青ざめるのが自分でわかった。しかし男の子は、けらけらと笑う。
「違うよー、あの時はもう死んでたし」
「う、嘘……」
「嘘じゃないよ」
私の手が、氷みたいな冷たい手に包まれた。嘘じゃない。この冷たさは、あの頃と変わらない。
「僕の"箱"、大事にしてくれてありがとう」
「あ、箱……」
「中身、知りたいでしょ?」
混乱する頭の中で、心は正直だった。ごくん、と飲んだ唾が心臓の動きを早くする。
「箱の中身は、僕の命」
「命?」
「そう、だから大切にして欲しかった。無くさないように、壊さないように、汚さないように……」
箱を見つめるだけで、返すようにも言わない彼は、なんだか嬉しそうだった。
「君の約束を守れなくて、ごめんね」
そして悲しそうな顔をする。
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