死地への約束

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「皆の者、早く逃げるんだ!」 一族の長が叫ぶ。 見張りが危険を察知したらしい。 一族全員が、一目散にまとまって逃げる。 今まで、それで上手くいっていた。 他の一族が、敵が現れる度に犠牲を出してきたのに対し、僕らの一族は見張りが優秀なのと、早め早めの行動のおかげで、犠牲がほとんど出ることはなかった。 しかし、今回はダメだった。 最初に姿を現したのは囮。 僕らが逃げた先には、さらにたくさんの敵。 奴等は待ち伏せしていた。 後ろからはさっきの奴が追ってきていて、戻ることは出来ないし、そもそも勢いよく逃げてきた僕らは急には立ち止まれない。 リスクを覚悟して奴等の横を抜けるしかなかった。 近くで最初の悲鳴があがる。 誰かが殺られた。 声からして、若い仲間。 その後も、駆ける度に誰かの悲鳴があがる。 若い声に混じり、年老いた者の声。 弱い一族の中でも、特に弱い者から消えていく。 ごめん。 僕には助けに戻ることも、仇を取ることも出来ないよ……。
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