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消え去った仲間を振り返ることもなく駆けていると、奴等の囲いを奇跡的に僕は突破出来た。
いや、死んだ仲間の方が運が悪かったと言うべきか。
一族のほとんどは生き残っている。
奴等とて、僕らを全滅させる必要はない。
仕留めた分で十分なのだ。
安全圏まで逃げ切った僕らを無駄に追い掛けるようなこともなく、僕を含めたほとんどの者は、一応の警戒をしつつも、仲間達が死んでいった方向を無言で見つめた。
やるせない思いと、自分でなくて良かったという、天の邪鬼な思い。
矛盾する気持ちを抱えながら見ていると、まだ逃げている仲間が見えた。
シクロだ。
他に逃げている者はいない。
死んだか、逃げ切った者だけ。
つまり、彼女は最後の生け贄候補にして、ほぼ確定。
仲間は、必死で逃げ惑う彼女を心配そうに見るも、誰一人助けようとはしない。
当然だ。
今あそこに戻るのは死地に向かうのと同義なのだから……。
しかし、僕には約束がある。
追われているのが他の誰かなら分からなかった。
けれど、彼女なら躊躇う必要なんてない。
僕は、彼女を認識すると同時に、彼女に向かって駆け出した。
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