仕方が…なかったんだ…

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「…ボク、タロウだよ…」  この妖怪、タロウって言うんだ…。妖怪にしては珍しい普通の名前だ…。 「…犬の…」  ……!!  オレはこの時ほど驚いたことはない。あの、たった一年で死んでしまったタロウ…。オレは、声がでなかった…。 「この妖怪、すごく弱かったんだよね…。で、ボクが退治したんだけどね。この妖怪って、倒されると身体だけ残して、昇天しちゃうんだ。その近くにいたボクの魂を吸い取っちゃって、この有様だよ…」 「…そう、か…タロウ、キミが…。なんて言ったらいいんだろ…。ありがとう、かな…。…どう言っていいのか…」 「…ボク、キミに約束したから。キミをコイツに食わせないって…」  オレには聞こえなかった。その時のタロウの声は…。  オレは10年ぶりに、タロウを抱きしめた。 「…おかえり…タロウ…」  ―― 終わり ――
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