仕方が…なかったんだ…

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「十年後、お前を食いに、行くからなぁぁぁぁぁ―――!!」  恐ろしげに言葉を残し、あいつは去っていった…。  この子犬の命を救うためにボクは…、仕方、ない…よね…。  オレは忘れてはいない。今日が10年目だ。あの子犬は1年後、アッサリと死んだ。  …悲しかったなぁ…。  …そして、あいつは来なかった…。食われたくはないが、気になった。  普通なら探しようはないのだが、幸いオレにはある。  幽霊やバケモノの類が見えるし、そいつらの声も聞こえる。手がかりはいくらでもある。と、思っていたんだけど…。1年経ったが、見つからなかった…。  こうなると、意地でも見つけ出したかった。食われたくは、ないんだけど…。 「ああ、そいつなら、山の祠にいるよ。別人になってるけど…」 「…ああ、ありがとう…」  通りすがりの河童が教えてくれた…。別人って…。『人』って! オレはおもしろくって、噴き出してしまった。  …ここ、か…。まさにおどろおどろしい場所だ…。誰が見ても、きっと何かがいる! と思うだろう…。オレは、中に足を踏み入れた。 「すみませぇーん、食われに来たんですけどぉー」  名前を知らないから、こう言うしかなかった…。そして、そいつはいた。姿かたちはそのままだ。ひとつ目の、鬼のようなやつだ。上半身は裸で、下半身には、動物の毛皮ようなものを巻いているだけだ。熊皮、かな? 「いるんだったら返事してよ…」  オレはコイツに文句を言った。 「…なんで…来たの…」  コイツの第一声はオレへの文句だった。 「探したんだよ。一年も…。食いに来るって言ったのに来ないからさぁ…」 「…ああ、それ、キャンセルで…」  妖怪から『キャンセル』という言葉を聞いて、オレは噴出してしまった。ハイカラな妖怪だ。自分で考えた『ハイカラ』という言葉にも噴出してしまった。  コイツが言った。 「…怖く、ないの?」  そういえば…。河童も言ってたけど、全然違うような…。 「それが、怖くないんだよね…。不思議、だねぇ…。それにキミって、姿は一緒だけど、雰囲気、違うよね? 畏れ、足らないんじゃない?」  ボクは、この妖怪にアドバイスしてしまった…。
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