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置いていかれ独りになって待ちぼうけ道路に立ち尽くす。いい加減お腹も空いて視界に靄がかかってきた頃、頭上に傘が差し出された。そうして雪穂は気付いた。いつの間にか雨が降っていて、それに長い間身体を濡らされていたことを。
胡乱な目で振り向き見たそこには、会ったこともない祖母と名乗る人が着物姿で凛と立っていた。
母と別れて久しい父親の方の祖母。そういえば縁を切られたと父が言っていた覚えがある。母も、自分に身内はいないけれど、どうして捨てる娘の面倒を別れた男のその母に頼んだのか。
まともに判断出来ない頭は考えることを放棄し、そのまま雪穂は母親への感情も放棄した。そうすれば楽だったし、一人息子に縁切りを言い渡した祖母は、驚くほど雪穂に優しく接してくれ、そこに甘えたくて仕方がなくなってしまったのだ。
ひとまずの荷物だけ作らされ、その夜から、雪穂は祖母の住む家で暮らし始めた。祖母と二人きりで。
祖母は、何も出来ないと思っていた雪穂が家事全般をとりあえずこなせることに驚き、そして雪穂の目がないところで涙していた。
祖母と暮らしたのは六年。家で一緒に暮らしたのは五年半。残り半年は、祖母の入院する病院に毎日足を運んだ。
元気だった頃の祖母は、雪穂のとりあえずだった家事全般を基礎から仕込みながら、惜しみなく愛情と笑顔を与えてくれた。いずれ独りになってしまう雪穂に、少しでも多く幸せな思い出を埋めていくように。
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