194人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「記憶がないの?」
孝太は首をかしげた。
「今朝おどろいたら、体が大きいなっとたちや」
無造作にソファに投げ出された孝太の手に手を重ねた。
何も言葉はかけられなかった。
「こじゃんと時間が過ぎちゅうとは……」
孝太の話だと、高校一年の冬までは記憶があるらしい。
今朝起きたときからだと言っている。
成美は少し前から症状があるのだと思った。
記憶喪失と、孝太の母親が伝えてきたことは結びつかなかった。
何か他の大きな病気が原因の症状なのかもしれない。
成美は不安になって、思わず孝太の腕にしがみついた。
「大丈夫やき。なんちゃじゃない」
孝太が、成美の肩に一瞬触れて、すぐに離した。
「こがーに寄りゆうは、いかんぜよ」
成美は、体を離した。
「体がな、自分のやないようやき」
最初のコメントを投稿しよう!