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成美は孝太の顔を見つめた。孝太も目をそらさない。
思考がまとまらず動けなかった。
言葉の意味は、考えてもわかりそうもない。
「てんごうやき……ごめんやあ」
そう言ったけれど、表情からも冗談とは思えなかった。
「孝太……何があったかは知らないけど……私、心配で」
孝太は眉根を寄せた。
「なんか、聞いちゅうがか」
成美は否定した。
「おばさんに、会いに来て欲しいって言われた」
「そんで……」
また沈黙に戻った。
「なあ、俺らあ、最後におうたん、中三の夏じゃろうか」
成美は頷いた。
「三年近く会ってなかった」
「そうながや」
孝太は額に手の甲を当てると、目を閉じてため息をついた。
「あん時のことは憶えちょるが」
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