阻止せよ!

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私は売れっ子占い師、売れっ子なのには理由がある。 それは私が、人の心を読める能力を持っているからだ。 そもそも高いお金を払ってまで占いをする人は超常的な予言を期待しているのではなく、迷っていたり悩んでいたりする事に背中を押して欲しいからである事が多い。 決断による責任を一人で背負うのは誰だって苦しいもの。 占いに責任転嫁をしたいのではなく、心の重荷を少しだけも軽くしたいのだ。 相手の心を読み取り、望む言葉を与えてやれば、大抵の人間は大喜びしてお金を払ってくれる。 相性占いなんかは最も簡単。 相性バッチリ上手くいくと言っておけば満足する。 別れたからと言って後でクレームをつけてくるヤツはいない。 むしろ正直に上手く行かないと伝えてしまうと、怒ってお金も払わずに帰っていくヤツさえいる始末。 ただその恋愛の保証証明が欲しいだけなのだ。 もちろん、真実味を出すための演出や方便の才能も必要だけどね。 そんなこんなで儲けた金で、私は今、海外旅行へ向かう旅客機の中にいる。 少し無理してファーストクラス。 何故かと言うと、金払いの良い顧客を捕まえる為だ。 なんの前触れもなく突然自分が悩んでいる事を指摘されるほどインパクトの強い事はない。 それだけで占い師としての私を信頼してしまうのだ。 どれどれ、悩んでいそうな奴は… お、アイツ、唸るような顔をして何か考えているぞ。 あれは相当悩んでいる顔だ。 早速、心を読んでみよう。
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