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5分もしないうちにCAが操縦室から出て来る。
「お客様の中で、パイロットの方はいらっしゃいませんか?」
失敗したーーー!
パイロット死んでんじゃねーか!
言わんこっちゃない。言わんこっちゃない。
いや言ってねーけど。
そして医者のつもりの男も眉間に皺を寄せながら出て来る。
「くそっ!なんてこった」
なに死力を尽くした感じで悔しがってんの?
お前何も出来てねーだろ、実際。
これ催眠術解けた後が可哀想だわ。絶対ショック受けるわ。
催眠術師はどう思ってんだ?この状況。
ピピピピ…
(無理だったかー!)
分かれー!
やる前に分かれー!
「くそっ!なんてこった」催眠術師も悔しがる。
お前はそれ言う資格ないからね。
お前何も頑張ってないから。勝手に催眠術かけただけだから。
これに懲りたら引っ込んでろ。
ピピピピ…
(よし、次はパイロットか)
懲りてなかった。
次催眠術使ったら助走つけて殴るぞ!
その時、がくんと飛行機が傾き、役目を果たそうと立っていた催眠術師は前の座席に顔面を打ち付けられる。
ざまあみろ!…なんて言ってる場合じゃない。
CAも近くの座席にしがみつき、もはや支えなしではその場に留まる事も難しいほどの振動に見舞われる。
飛行機はまるで使役する主人を失った猛獣のように、乗客を飲み込んだその身体を暴走させている。
くそっ!なんてこった。
誰か、この危機を脱するアイデアはないのか?何か良い方法を思いついたヤツは?
ピピピピ…
(そうか!わかったぞ。こうすれば良かったのか)
おお。いた!
誰だ?何を思いついたんだ?
ピピピピ…
(2三銀だ!)
詰将棋だった!
どんな集中力?お前もうプロになれ。
ピピピピ…
(これで一手詰めは全問制覇だぜ)
やっぱやめろ。
その集中力は違う事につかえ。
ガクン!
飛行機はエアポケットに入ったように、いきなり高度を下げる。
うう、もうだめだ…。
その時、一人の乗客が手を挙げて指先を天に向けた。
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