君にこの花を捧げる

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 吐く息が白く染まる季節、冬。 大きな日本屋敷の縁側で、一人の男が佇んでいた。手が悴むほどの寒さの中、男はTシャツとジーンズというなんとも寒そうな恰好だ。 気温を肌で感じていないのか、少しも寒そうな表情も仕草もない。縁側に胡坐をかいて座りこみ、しみじみといった風に庭を端から端まで目に映した。 「今年もこの季節が来たな・・・」 男は庭を眺めながらそう呟くと、立ち上がり屋敷の中へと戻っていく。 庭には今年初めの雪が積もり、一面の雪景色が広がっている。既に雪は止んでおり、何の音も無い静かな世界だ。 やがて男が縁側に戻ってくると、両手に籠を抱えていた。中には雪と同じような、たくさんの真っ白な椿。顔に笑みを浮かべながら椿を見つめると、その中の一つを手に取り、白銀の世界へと放り投げた。 空を舞った白い椿は、やがて雪の上へと落ちた。一通り、椿の行方を目で追っていた男はうっそりと笑う。そうして繰り返し繰り返し、同じ事を行う。 椿を放り投げるたび、椿の行方を目で追い、雪の上に落ちると笑みを浮かべる。緩慢な作業が続いていくと、男の顔に笑みが深まっていく。たくさんの椿を放り投げ、遂に最後の一つとなった時、男は放り投げる事をやめた。 手に持った白椿をじっと見つめる。花弁一枚一枚を愛でるように撫でていき、口付ける。 そうしてやっと、最後の椿を雪の上にそっと落とした。 「これで完成だな」 全ての椿を雪の上に落としたあと、男は万感の思いで呟く。庭は、白椿が雪に溶けていくような、なんとも不思議で幻想的だ。 男は左のポケットからデジカメを取り出し、庭を撮影する。レンズ越しに見る庭にうっとりとし、まるで恋をするかのように。 「なんと美しい・・・!」 男は感嘆の息を洩らしながら言った。
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