あの子

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   よぎった想いは、心のすきま風になって消えた。  温かい思い出なのに、なんでこんなに寂しいんだろう。  きっと、あいつのせいだ。 「置いてくぞ」  低めの声に、私ははっと振り返る。  前を歩く君はぶっきらぼうで、あの子とは似ても似つかないけど、不思議。  君といるとなんでか懐かしい。 「待って!」  過去への想いを振り切って、あの頃みたいに、慌てて君のもとに駆け出した。 《完》  
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