疾風のごとく…

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「…シンイチ、逃げてばかりじゃ何も話しは進まないよ。ちあき、半分楽しんでるんだから…。ちゃんと話し合った方がいいだろ?」 「キョウジさんも知ってるでしょ…。オレ、ちあきは苦手なんですよ…。口ではもう勝てないし…」  子供の頃は口ゲンカは勝っていたんだけど、今は圧され気味だ…。あの体格で押し迫られるとね…。  ちあきはビーチパラソルコーポレーションの相談役を10才の頃からやっている。どんな勉強方法でその地位を獲得したのかはなんとなくわかったけど、人としてはかなりの規格外だ。  そして身長も…。175センチって、オレより20センチも高いじゃん!  オレのトラウマは背の高さ。うちの家系は、160センチを超えた人物は現れていない。オレの家系図で、身長の記載が必ずあるんだ。変った一族だ…。先祖代々でコンプレックスになっていたんだろう…。  そういう理由もあって、威圧感がすごいんだ。だからオレは萎縮するんだろう…。グラウンドに立てば、負ける気はしないんだけどな…。 「最近会ってないけど、祐馬さんはなんて言ってるの?」 「佐伯監督は、援護するからプロに行け、って…」 「だったらはっきり、ちあきにそう言えばいいじゃん…。追いかけっこは、もう飽きただろ?」 「………」  オレ達の男の会話に、邪魔が入った。 「さすが、恭司様ね。さすがの心一様も降参かしら? おーほっほほ!」  …デカいな、いつ見ても…。そして、うらやましいよ…、ちあき…。  学校内でもいい女のイチニを争う、生徒兼校長のちあき…。特に女子生徒からは絶対の信頼がある。男子は…恐怖しているが…。 「シンイチ、ここ、グラウンドだぜ!」  …まさかキョウジさん、これを狙って! このグラウンドはオレたちが野球を始めたグラウンドだ。オレ達の汗が浸みこんだ、グラウンド…。今は市営球場になっちゃったけど、社長が残してくれた、オレ達の最高の場所なんだ。オレは、勇気が沸いたかもしれない。
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