疾風のごとく…

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 ちあきはゆっくりとオレ達に近づいてくる。SPの住良木さんも鹿田さんも大変だね…。…ああ、ふたりも呆れてるね…。  ちあきがグラウンドに入ろうとした。オレは叫んだ。 「ヒールでグラウンドに入るな!!」  …あ、声、出たな。オレはスニーカーだから、OKだ…。 「…ふ、ふふふ、さすが、鬼の八丁畷様の秘蔵っ子、心一様ですわ。今の渇、こころに響きましたわよ! おーほっほほ!」  …あーあ、喜んじゃったよ…。仕方がないので、オレがちあきに近づいた。  …あれ、怖くないね? やっぱり、グラウンドだからかな? あ、違った…。ちあき、ベンチにいるから、視線が平行だ…。ベンチはグラウンドより20センチ低いからな。ナイスなシチュエーションだ!  オレから話を切り出すことにした。 「オレは、スーパーダイヤモンズに行く! オレは誰の命令も受けない! これは、決定事項だ!」  オレはカッコつけて、ちあきに指差してやった。いつもちあきがする、相手を萎縮させる手だ。 「…はい。がんばって、いってらっしゃいませ。心一様…」 「………」  …はぁ? どーゆーこと…。あれだけ『スーツ着ろ!』とか言っておきながら…。 「…わたくしの本位ではございませんが、心一様がそう仰るのなら…」 「………」  …オレはここで、なんて言えば正解の言葉を発せられるのだろう…。 「…なんだよ、急に…。いつもと全然違うじゃねーか…」 「わたくし、今のような心一様を拝見したかっただけですの。でも心一様は逃げてばかりで…」 「ちあきが執拗に追っかけてくるからだろ。スーツ着ろ、スーツ着ろって…。この八年間ずっとオレを追い掛け回して、なにが楽しいんだよ!」 「あら? わたくしはいつも心一様に告白、差し上げていたつもりですが…」 「…まあ、それは…、ちゃんと、わかってたけど…」  …オレの予想に反して、妙なことになってきたな…。鈍いオレでも、ちあきのアプローチは当然わかっていた。…オレのことが好きだって言うことも…。…オレも、好き…だけど…。  しかしこれは、ちあきの策略に違いない…。ちあきの考え及ばぬ方法に出ないと、オレは、きっと、負ける!  ちあきはじっと、オレを見ている。どうしたらいい。いやダメだ! 奇襲過ぎる! でも、オレにはこの手しか残っていない!
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