1人が本棚に入れています
本棚に追加
ちあきはゆっくりとオレ達に近づいてくる。SPの住良木さんも鹿田さんも大変だね…。…ああ、ふたりも呆れてるね…。
ちあきがグラウンドに入ろうとした。オレは叫んだ。
「ヒールでグラウンドに入るな!!」
…あ、声、出たな。オレはスニーカーだから、OKだ…。
「…ふ、ふふふ、さすが、鬼の八丁畷様の秘蔵っ子、心一様ですわ。今の渇、こころに響きましたわよ! おーほっほほ!」
…あーあ、喜んじゃったよ…。仕方がないので、オレがちあきに近づいた。
…あれ、怖くないね? やっぱり、グラウンドだからかな? あ、違った…。ちあき、ベンチにいるから、視線が平行だ…。ベンチはグラウンドより20センチ低いからな。ナイスなシチュエーションだ!
オレから話を切り出すことにした。
「オレは、スーパーダイヤモンズに行く! オレは誰の命令も受けない! これは、決定事項だ!」
オレはカッコつけて、ちあきに指差してやった。いつもちあきがする、相手を萎縮させる手だ。
「…はい。がんばって、いってらっしゃいませ。心一様…」
「………」
…はぁ? どーゆーこと…。あれだけ『スーツ着ろ!』とか言っておきながら…。
「…わたくしの本位ではございませんが、心一様がそう仰るのなら…」
「………」
…オレはここで、なんて言えば正解の言葉を発せられるのだろう…。
「…なんだよ、急に…。いつもと全然違うじゃねーか…」
「わたくし、今のような心一様を拝見したかっただけですの。でも心一様は逃げてばかりで…」
「ちあきが執拗に追っかけてくるからだろ。スーツ着ろ、スーツ着ろって…。この八年間ずっとオレを追い掛け回して、なにが楽しいんだよ!」
「あら? わたくしはいつも心一様に告白、差し上げていたつもりですが…」
「…まあ、それは…、ちゃんと、わかってたけど…」
…オレの予想に反して、妙なことになってきたな…。鈍いオレでも、ちあきのアプローチは当然わかっていた。…オレのことが好きだって言うことも…。…オレも、好き…だけど…。
しかしこれは、ちあきの策略に違いない…。ちあきの考え及ばぬ方法に出ないと、オレは、きっと、負ける!
ちあきはじっと、オレを見ている。どうしたらいい。いやダメだ! 奇襲過ぎる! でも、オレにはこの手しか残っていない!
最初のコメントを投稿しよう!