6人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
『必ず幸せにします。ですから、どうかタキさんとの婚姻を認めて下さい!』
戦争が終わったばかりの混乱期。
背広にネクタイ姿の男性がタキの両親の前で土下座をし、そう言葉にする。
『榮治君、君の娘に対する思いはわかるが。・・・・・・その、君は結核に罹っているそうじゃないか』
タキの父親は紺色の着物に身を包み、厳しい顔で畳に伏せる彼の頭を見つめる。
『はい・・・・・・ですが、きちんと療養して治しますので、どうか、お願いします!』
一度顔を上げてそう言い、もう一度彼は頭を下げた。
『だが、君にもしものことがあってみなさい。婚姻してすぐに夫を亡くしたとなれば、娘はしばらくの間寂しい思いをする。それが幸せだと思うかね?何もそれだけじゃない、もし結核がタキにうつって死んだなら、君が殺したようなもんだ。それでも君はいいと言うのかね?』
それに榮治は唇を噛んで、ゆっくりと口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!