第一章

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「ホームヘルパーが家に来るようになったって。皆、おかしい、おかしい言って、騙されてるんじゃないかって、富岡さんを家に帰したんだよ。それっきり・・・・」 「それはいつぐらいですか?」 「9月の半ば過ぎだったと思うね。月曜が老人クラブの集まりだから・・・・・・富岡さんは気の強い人だったから、男を追い出そうとして殺されたに違いないよ」 「その男性を見かけたことはありますか?」 「いや、私はないね。近所に住む土井さんなら知っているかもしれないわ」 「土井・・・・何さん?」 「土井トシ子さん」  今言われた情報を手帳に書き込みながら、彼女の話を聞く。  事件の可能性が高まる中、警察は男性遺体が誰であるかを判明させて、彼女との関係を割り出そうとしていた。  タキの第一発見者である娘の菜穂子に遺体の男の顔写真を見せたところ、家族や親戚関係ではないと言う。  菜穂子が知っている限り、タキの交友関係は近所付き合いくらいで、知り合いはいてもタキと同じくらいの年齢。  30歳くらいの男性の知り合いなど聞いたことがないと言う。 「おい、田辺。行くぞ」  しばらく話を聞いていたが、車を運転していた男に声をかけられて顔を上げた。
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