第一章

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「いえね、私ももう、電球を取り付けるのができなくて、子供たちにお願いするしかなくて・・・・・・」 「でも、掃除は毎日やっているんでしょう?私なんて、ちょっと台所に立っただけで、すぐ足が痛くなってね。もう、歳ね」 「山田さんはまだいいわよ。私なんか、血圧を下げる薬を飲み忘れると、歩いているだけで息切れするんだから、いやんなっちゃうわよ」  他の人も話に加わってくる。  大きなテーブルを囲むようにソファーがあり、テーブルの上にはせんべいや茶菓子などが置いてある。  センターの職員が入れてくれたお茶を飲みながら数時間お話をするだけ。  一ヶ月に一度はレクリエーションがあり、工作をしたり軽い運動を行ったりもする。  家に引き篭もりがちな高齢者たちを外に連れ出すだけでなく、コミュニケーションを取る場として利用できる。  タキを入れて五人ほどいたが全員女性。 「村井さんなんか、夏から体調を崩したみたいで、今入院してるでしょう?やっぱり夏は気をつけないと」 「河野さんも去年、亡くなったし、年々減っていくわね」 「仕方ないわよ。私らだって、もう両足棺桶に突っ込んでるんだから」 「まあ、もう、今さら、何の未練もないけど・・・・・・」  そんな他愛のない話をしながら二時間ほどそこにいて四時くらいに家に戻った。  それから夕飯の支度をして六時には夕食を食べ、お風呂に入り、二時間くらいテレビなどを見てゆっくりし、九時には寝るという生活。  猫などの動物も自分が死んだ時のことを考えると、飼うわけにもいかず、たまに玄関先に来る野良猫にカツオ節をやるくらい。
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